実物の道具を持ち寄る講習|長野県伊那市|検査・修理・記録まで

「まだ使えるよ」を、
誰の言葉で決めていますか。

同じロープなのにAさんに聞くと「これはもうだめだね。交換したほうがいいよ」。ところがBさんに聞いたら「ぜんぜんまだ使えるよ。大丈夫!」どちらを信じたら良いのでしょうか?

これはAさん、Bさんの「判断基準」が違うので見解が異なるのは当然です。

講習名 とことん特伐道具のメンテナンス
廃棄基準を知りたい人へ

誰が正しいのか?
何が正しいのか?

Aさん・Bさんの主観ではなく、客観的基準に基づいて「本質を追求する習慣」をつくってください。そうすれば迷うことなく、安心してご自分の道具を使うことができます!

講習が終わるとき、答えは三つのどれかになる。

教材の最後の一節から——まだ使えるのか? もう使えないのか? 修理すれば使えるのか? を確信をもって判断できます!

使える基準を満たしている。安心して作業に集中する
修理すれば使える直せば使えます!——磨く・縫い直す・分散させる
廃棄間違って他人が使わないように、赤テープを巻きます。

「捨てる」ための講習ではありません。基準を知ることで道具の寿命を伸ばして、余計な出費を防ぐところまでが目的です。

あなたが判定する

この症状、あなたならどうしますか。

教材はまず実物の写真を並べてこれらの器具をまだ使いますか?と問い、続けてどのような基準で判断しますか?と問います。

外皮のストランドが切れて毛羽立ったロープの写真
教材の例①: 外皮(sheath)のストランドが切れている
ハーネスのウエビングが擦れて毛羽立った部分の接写
ハーネスのウエビングの摩耗——2mm以上傷が付くとそこから一気に壊れる!

ここでは教材が基準を明記している症状だけを挙げました。まず自分の答えを決めてから、開いてください。

  • 隣同士の2本のストランドが切れているロープ
    廃棄

    隣同士の2本のストランドが切れているロープは廃棄する——教材はストランド(糸の束)の切れ方を、本数と位置で見ます。

  • 揉みほぐしても凹みが戻らないロープ
    廃棄

    揉みほぐしても凹みが戻らない →廃棄 (伐倒した材に挟まれた)。膨らみが戻らない、硬くて曲げにくい、も同じ判定です。

  • 摩擦熱で一部が溶けているロープ
    使える・ただし

    摩擦熱で一部が溶けている →安全係数を増やす——三択の外にもう一段。化学薬品との接触で溶けているものは廃棄、と溶け方で分かれます。

  • ストランドが飛び出ているロープ
    修理

    ストランドが飛び出ている →左右に分散させればOK縫い糸が抜けているものは縫い直す。

  • ゲートを開き、静かに手を放すとオートロックにならないカラビナ
    まず洗浄それでも駄目なら廃棄

    →再度洗浄 →再度洗浄してもダメなものは廃棄原因:荷重オーバーで変形している・砂が噛んでいる。

  • 摩耗して本体が細くなっているカラビナ
    廃棄

    一方、表面のキズがロープやヒッチコードを傷めないか?という見方のキズは修理:耐水ペーパーで滑らかに磨く。——同じ「傷んでいる」でも判定が分かれます。

  • 摩耗・毛羽立ち 円周の50%以上のロープ
    教材では「?」

    教材はこの行の判定欄を→?のまま空けています。書き込み式の教材で、講習の中で自分の手で埋める欄です。

症状と判定は講習テキスト(2025年7月改定)の「廃棄基準」「修理」「カラビナ」の各節から、判定が明記されているものだけを抜き出しました。数字や語尾は原文のままです。

触診検査:目を閉じて指で異常(ア~キ)を感じる
曲げ検査:ロープを「Ω」の形にしながら、ロープ内部の異常を見つける。

——講習テキスト「検査方法」より。目で見る前に、指で見る。→同じ形のアールになればOK、揉みほぐして直ったらOK。

両手でロープをΩの形に曲げて内部の異常を探している曲げ検査の写真

両端を持って「Ω」に曲げる。凹み・膨らみ・硬さは、この形の崩れに出る

寿命は、荷重で決まる

ぎりぎりで使えば5回。
5分の1に抑えれば750回。

破断強度ギリギリ(安全係数1.1)つまりレッドゾーンギリギリでロープを使用していると、リギング5回で破断してしまいます。 一方、破断強度に対して1/5の重量に抑えると(安全係数5以上)ロープの寿命が750回まで延びます。

ロープの最小破断強度枝・幹の重量安全係数破断までの使用回数
133kN22kN61000
133kN27kN5750
133kN44kN3300
133kN67kN2100
133kN124kN1.15

出典:TCIA Best Practices for RIGGIHG(教材の表をそのまま転記。綴りも原文どおり)

安全面からも財布の面からも「適正な荷重」で仕事をすることをお勧めします。——検査で見つける傷みの多くは、使い方の側からも減らせる。教材はそこまでを「寿命を延ばす」の範囲に入れています。

当日の流れ

道具を長持ちさせる検査の流れ

  1. 洗浄汚れがあると異常を見つけにくい。
  2. 潤滑金属部品の動きを滑らかに。
  3. 検査触診検査、視覚検査、動作検査、曲げ検査、
  4. 修理直せば使えます!
  5. 識別(ID)道具の検査済、未検査をはっきり区別する。所有者をはっきりさせる。
  6. 検査記録専用リストに記入し、提出、保管。
  7. 廃棄間違って他人が使わないように、赤テープを巻きます。
  8. 補充、ID記入必要道具はすぐに補充します。そうしないと必要に迫られて廃棄道具を仕事に使ってしまう!!!
  9. 保管——翌日、安心して使うために

識別(ID)は、全く同じものが21個あるので「どれが検査済みか?」分からなくなります。そこで、1つ1つに「名前」をつけて区別します!という講師自身の道具の話から始まります。所有者・種類・番号・用途をひとつの記号にする方法まで教材にあります。

プーリーにルーターでID記号を刻印している手元の写真
ID刻印の手元。*強度劣化につながるところには刻印しません。
ロープの末端に記されたID記号の写真
ロープ末端のID。所有者・種類・番号・用途がひとつの記号になる

目的と目標

目的:道具の整備不良が原因による事故を撲滅する。

目標:ヨーロッパの安全基準に従い、

  • まだ使えるのか?
  • もう使えない、廃棄か?
  • 修理すれば使えるのか?

を理解する。

習得すると——

道具に対する不安が解消され、安心して作業に集中できる。

ボロボロの道具を使っている仲間に、正しいアドバイスができる!

道具の寿命を伸ばして、余計な出費を防ぐ。

今日から皆さんは道具検査の「プロ」です。ご自分の道具を安心してお使いください!

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開催と記録

記録は、公開しています

  • 開催2024年から開催(2024年は「特伐道具 手入れと点検」「特伐道具を長持ちさせるコツ」、2025年は「特伐道具の寿命を伸ばすメンテナンス」の名で。2024年3回・2025年2回の記録)。2025年の開催記録「検査 とは」
  • 持ち物ご自分の道具——教材の流れはハーネスに装着している道具を全て外し、種類別に並べます。から始まります
  • 教材講習ごとの専用テキストを版管理(本講習は2025年7月改定版)

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